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福島家庭裁判所 昭和63年(家)91号 審判

申立人 大山典夫

相手方 山口一 外12名

主文

1  被相続人大山マツの遺産を次のとおり分割する。

(1)  別紙物件目録(編略)記載の不動産を申立人の取得とする。

(2)  申立人は、相手方山口一、同山口修、同山口孝二に対し、それぞれ金39万9555円を、相手方本田友一に対し、金79万9111円を、相手方杉山民雄、同杉山信夫、同杉山初江に対し、それぞれ金6万6592円を、相手方本田勝、同岡田美江子、同広部トミ、同森本奈々代、同本田誠に対し、それぞれ金3万3296円を支払え。

2  手続費用中、鑑定人○○○に支払った金10万円は、申立人が3万円、相手方山口一、同山口修、同山口孝二が各1万2000円、相手方本田友一が金2万3000円、相手方杉山民雄、同杉山信夫、同杉山初江が各金2000円、相手方本田勝、同岡田美江子、同広部トミ、同森本奈々代、同本田誠が各金1000円を負担することとし、相手方らは、申立人に対し、それぞれ上記負担金を支払え。

その余の手続費用は、各自の負担とする。

理由

一件記録により、当裁判所が認定した事実及びこれにもとづく判断は、以下のとおりである。

第1相続人及び相続分

1  被相続人は、昭和30年5月19日、死亡し、その相続人は、別紙相続関係説明図(編略)記載のとおり、申立人、相手方ら及び大山孝太郎、大山和男、本田健の16名である。

2  各相続人の相続人分は、申立人、大山孝太郎、大山和男、相手方山口一、同山口修、同山口孝二が各9分の1、相手方本田友一が9分の2、相手方杉山民雄、同杉山信夫、同杉山初江が各54分の1、相手方本田勝、同岡田美江子、同広部トミ、同森本奈々代、同本田誠、本田健が各108分の1である。

3  大山孝一郎は平成2年10月30日、大山和男は同月31日、本田健は平成元年5月2日、いずれも申立人に対し、相続分を譲渡したから、遺産分割の当事者適格を失ったものである。その結果、申立人の相続分は、108分の37となる。

第2遺産の範囲及びその評価額

1  被相続人の遺産は、別紙物件目録記載の不動産(以下「本件不動産」という。)である。

2  本件不動産の平成2年9月1日時点における評価額は、同目録1記載の不動産が475万7000円、同目録2記載の不動産が243万5000円、合計719万2000円であり、現在もその価格に変動はないものと考えられる。

第3各当事者の生活状況及び遺産分割に関する希望

1  申立人は、被相続人の長男大山田吾次郎の長男で、被相続人が昭和30年5月19日に死亡した当時、両親、妻子らとともに、被相続人と肩書住所地において同居していた。本件不動産は、申立人の父が、同人所有の田畑とともに耕作していたが、同人が昭和37年7月4日に死亡した後は、申立人が父から相続した田畑とともに耕作を続けている。申立人は、現在、妻と会社員の長男と3人で同居しており、田で米を作って自家用としているほか、本件不動産をも含めた畑で主として野菜を作って、市場に出し、年収150万位を得て生活しており、本件不動産を取得することを希望している。

2  相手方山口一、同山口修、同山口孝二は、被相続人の長女山口トヨ子の子である。相手方山口一は、会社員で年収240万円位を得ており、遺産の現物の分与に代えて金銭の支払いを希望している。相手方山口修は、所在不明である。相手方山口孝二は、会社員で年収1000万円位を得ており、遺産の現物の取得を希望している。

3  相手方本田友一は、被相続人の3男大山六郎の子である。相手方本田友一は、無職で、月18万円位の年金を得ており、遺産の現物の分与に代えて金銭の支払いを希望している。

4  相手方杉山民雄、同杉山信夫、同杉山初江は、被相続人の3男大山六郎の妻大山シヅの兄の子である。相手方杉山民雄は、医師で年収1500万円位を得ており、遺産の取得を希望していない。相手方杉山信夫、同杉山初江は、いずれも会社員で、遺産の取得を希望していない。

5  相手方本田勝、同岡田美江子、同広部トミ、同森本奈々代、同本田健は、被相続人の3男大山六郎の妻大山シヅの姉の子である。相手方本田勝は、会社役員で年収500万円位を得ており、遺産の取得を希望していない。相手方岡田美江子、同広部トミ、同森本奈々代は、無職で、いずれも遺産の取得を希望していない。相手方本田健は、公務員で、遺産の取得を希望していない。

第4各当事者の具体的相続分額

1  第3、1の事実によれば、本件不動産は、被相続人の生前から同人と同居していた申立人の父が耕作し、被相続人、その後父が死亡した後は、申立人が父の使用状態を承継して、耕作を続けていたのであるから、申立人には、本件不動産の占有使用を継続する正当性があり、その地位は他の共同相続人においてもこれを尊重すべきものと解される。したがって、遺産分割にあたり、本件不動産を評価するについては、賃借権の付着している場合に類似して、その客観的評価額から前記占有使用の利益相当額を控除して評価するのが相当である。そして、申立人の占有使用の利益は、占有使用期間、使用状態、被相続人と申立人との関係等を総合考慮すれば、本件不動産の価格の5割とするのが相当である。

2  そうすると、分割すべき遺産の価格は、719万2000円の5割の359万6000円となる。

3  各当事者の具体的相続分額は、申立人が359万6000円の108分の37の123万1962円(円未満切捨、以下同じ。)、相手方山口一、同山口修、同山口孝二がそれぞれ359万6000円の9分の1の39万9555円、相手方本田友一が359万6000円の9分の2の79万9111円、相手方杉山民雄、同杉山信夫、同杉山初江がそれぞれ359万6000円の54分の1の6万6592円、相手方本田勝、同岡田美江子、同広部トミ、同森本奈々代、同本田健がそれぞれ359万6000円の108分の1である3万3296円となる。

第5各当事者の具体的取得分

第3で認定した本件遺産に属する本件不動産の地目、現況、占有使用状況、各当事者と被相続人との続柄、各当事者の職業、生活状況、遺産分割に関する希望並びに本件記録上明らかな各当事者の住所地と本件不動産との位置関係、その他一切の事情を総合考慮すると、被相続人の遺産を以下のとおり分割するのが相当であると認める。

1  本件不動産を申立人の取得とする。

2  申立人がその具体的相続分額を超えて取得した分については、その価額相当の金員を申立人から相手方らに対して各相続分額に応じて支払うことによって、調整を図るのが相当であるから、申立人は、相手方山口一、同山口修、同山口孝二に対し、それぞれ39万9555円を、相手方本田友一に対し、79万9111円を、相手方杉山民雄、同杉山信夫、同杉山初江に対し、それぞれ6万6592円を、相手方本田勝、同岡田美江子、同広部トミ、同森本奈々代、同本田健に対し、それぞれ3万3296円を支払うべきものである。

第6結論

よって、被相続人の遺産について、主文1項のとおり分割し、手続費用中申立人が立替え支払った鑑定費用10万円は、主文2項のとおり各当事者に負担、支払いさせ、その余の手続費用は各自の負担とすることとして、主文のとおり審判する。

(家事裁判官 山本矩夫)

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